■「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2005」レポート
2005年2月24日(木)〜2月28日(月)
日本インディペンデント映画界の最高峰、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のオフシアターコンペティション部門。いつかは夕張へと夢見ていたが、それがまさかこんなに早くに叶うとは。・・・
あれは今年の正月、「福井青春物語」のロケ真っ最中であった私の携帯が鳴った。本番中の私に代わって、妻が電話を取った。撮影終了後、嬉々とした表情で私に駆け寄る妻。電話は映画評論家でありゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアターコンペティション部門のプログラミング・ディレクターである塩田時敏氏からであった。我が監督作「the rootless wanderer」がノミネートされたというのである。私は興奮のあまり、何故か側にいた津田寛治氏にこの喜びを伝えた。こんなに嬉しいことはなかった。遂に悲願の夕張へ、招かれることになったのである。最高の気分であった。
旅立ち
2月22日、私は家族と共に実家のある福井に帰省した。娘たちを親に預け、いざ出立の支度を整えた。飛行機で飛べば羽田から2時間で行ける夕張。しかし神聖なる夕張の地を飛行機でビューンなどと、そう易々と踏むわけにはいかぬ。私と妻は、船で18時間掛けて北海道に上陸することを決した。新日本海フェリーのチケットを取り、敦賀港から乗船する計画。KENFIL ARTS福井支部を代表して枡谷拓幸支部長が福井から敦賀まで送迎役を買って出てくれた。出航は日付を回って23日午前1時半。
船の旅は最高であった。豪華客船の中は至極快適。途中荒波の為に佐渡島に暫く停泊したが、それはそれで楽しい経験になった。他の乗客らと喫煙ルームで戯れに世間話など交わし、全く退屈など感じさせない18時間の船旅であった。何よりも夕張への期待に、胸が躍って仕方がなかった。
北の大地、北海道へ初上陸
24日深夜、苫小牧東港着。初めて踏む北海道の地。気温は零下。凄まじい冷気が肌を突き刺す。来た来た来たぜ!
ついに北の大地へ初上陸だ! 実感が湧いてくる。漸う空が白み始めた頃、私と妻は列車に乗って苫小牧から夕張を目指した。車窓から眼前に展開する雄大なる雪景色に息を呑みつつ、列車は走った。夢と希望の溢れる映画の町へ。
24日昼、夕張駅着。吹雪が濛々と吹き荒ぶ一面の雪景色。巻き上がるパウダースノー。そこはあたかも異世界のごとく我々の前に姿を現した。これが夢にまで見た夕張!
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭の開催地である!
いよいよ開幕
早速ホテルシューパロにチェックイン。荷物を置いて、夕張探索に。もう到るところに映画の看板と映画祭のポスターやオブジェが飾り立てられている。祭である!
この町全部が、今まさに映画への愛の炎で包まれているのである! こいつぁ凄いぜ。今日から夕張に住んでもいい。それくらいの感動を覚える。否、訪れる人間に意図せずしてそれくらいの衝動を引き起こさせる映画の町の、圧倒的な魅力がいずこからか沸々と湧き起こっているのである。これは実際現地に来てみた者にしか分かるまい。まさに桃源郷とはかの地である。
いよいよ映画祭開幕の時。1000人以上の観客を収容可能なゆうばり文化スポーツセンターに設置せられた超特大のスクリーンにて、オープニングセレモニー開催。今日から5日間にわたって、映画の祭が執り行われるのである。
映画祭スケジュール表はこちら(PDFファイル)
夜9時からはウェルカムパーティーに出席。日本映画界を代表する方々と立食形式の懇親会。まずはオフシアター部門の審査員長を務める廣木隆一監督にご挨拶。
オフシアター部門
25日、いよいよ我が「the rootless wanderer」の上映。オフシアターコンペティション部門のオープニングを飾る。この作品には台詞が無い。勝負は音響。全ては会場の良し悪しで左右される。事実映画祭の中には、上映途中で意図せずして音声ノイズが入ったり、映像が乱れる場合もある。しかしさすが国際映画祭を冠するだけのことはある。その心配も杞憂に終わった。音響設備は最高。満足いく上映に終わった。
その後も他のノミネート作品を鑑賞。翌日も続けてオフシアター部門を全作品鑑賞した。その合間合間に、循環バスに乗って夕張市内各地で招待作品などを観て回る。招待監督らはスクリーニングパスが支給され、会期中の上映作品は全部無料で鑑賞出来るのである。私たちはここぞとばかりに、まだ配給されていない新作映画を鑑賞し尽くした。
期間中は、映画監督のキム・ギドク、行定勲、滝田洋二郎、俳優の市川染五郎、松方弘樹、大杉漣、女優の吉永小百合、深田恭子、宮沢りえ、京野ことみら錚々たる面々が夕張を訪れた。この映画祭の凄いところは、そういった有名人と実に近距離で、垣根なく接することが出来るところである。偶然エレベーターに乗り合わせたり、町角で出会ったりすることが多々ある。こういう雰囲気は、他にはなかなか無い。
名残惜しくも閉幕
27日、遂に映画祭が閉幕。残念ながら「the rootless wanderer」は受賞はならなかったが、そんなことはどうでもよかった。このゆうばり国際ファンタスティック映画祭という偉大な舞台で、自分の監督作が上映されたことだけでも非常に光栄なことである。
閉会後、“さよならビッフェ”と呼ばれる立食パーティーに出席。夕張市民の皆さんの手作り料理を美味しく頂く。何から何まで、本当にこの夕張という町は素敵だ。市民が一丸となって映画祭を盛り上げている様が肌で感じられる。最も寒い地で開催される最も暖かい映画祭。その言葉は間違いなく真実であった。

▲さよならビッフェにて、オフシアター部門ノミネート監督らと
祭のあと、我々は再びフェリーにて18時間揺られ、福井に立ち返った。顧みれば、5日間のあいだ夢を見ていたかのようであった。船窓から日本海の荒れ狂う大海原を眺めながら、私は夕張に或る種の想いを寄せている自分に気がついた。そうか、この激甚な燃える想いは、恋なのだ。私は夕張に恋してしまったのだ。
あまりに素晴らしすぎた映画祭、ゆうばり。私も数々の映画祭に参加したが、おそらく日本一素敵な映画祭であることは間違いない。その想い出は今でも、私の心の中で強く光り輝いている。またこの地を踏みしめる為に、いい作品を生み出さねばならない。
小野寺昭憲
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敦賀港にて、枡谷拓幸支部長と

映画評論家・塩田時敏氏と

ゆうばり国際映画祭の旗

雪化粧の夕張駅

かまくら

輝くイルミネーション

審査員長の廣木隆一監督と

舞台挨拶にて、塩田時敏氏と

雪上フォトセッションにて

俳優・奥田瑛二氏と

「隣人13号」の井上靖雄監督と

グランプリの真利子哲也監督と
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